赤ちゃんのうつぶせ寝はいつから?うつ伏せの練習は?SIDSの危険は?

うつぶせ寝と聞くと、「窒息しそう」、「身動きがとれなくて苦しいのではないか」といった不安を抱くのではないでしょうか。
実際、書籍やネットで調べてみると、「赤ちゃんのうつぶせ寝は危ない。」という情報がたくさん見つかります。
また、周りの20~40代の育児経験者に聞いても、うつぶせ寝はオススメされないことが多いでしょう。
しかし実は、うつぶせ寝が危険だと言われ始めたのは、欧米の研究でうつぶせ寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関連性が指摘され、赤ちゃんを仰向けで寝かせることを推奨するキャンペーンが大々的に実施された1980年代後半からです。
こうした欧米の影響を受け、日本でも乳幼児突然死症候群(SIDS)という言葉が世間で知られるようになり、「赤ちゃんのうつぶせ寝=危険」という情報が出回るようになりました。
うつぶせ寝が乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因だという医学的な根拠はありませんが、一旦広まった情報がそのままになっているのが現状です。
赤ちゃんをうつぶせに寝かせると、仰向けに寝かせたときに比べて窒息のリスクが高くなるのは事実なので、漠然と不安を感じている親も多いものです。
しかし、どんな寝かせ方にも危険はありますし、危険性と対応方法をきちんと把握していれば、うつぶせ寝にはメリットもたくさんあるものです。
この記事では、うつぶせ寝のメリットとデメリット、始める時期、うつぶせ寝の注意点、うつ伏せの練習方法について紹介します。
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うつぶせ寝とは
うつぶせ寝とは、顔やお腹を下にして寝ることです。
日本では、冒頭で紹介した経緯から「赤ちゃんを寝かせる時は仰向け」という考え方が浸透しています。
しかし外国では、仰向け、横向け、うつ伏せなど色々な寝方を経験させるのが一般的なところもあります。
親が赤ちゃんをうつ伏せ寝させる時は、顔を下に向けていると窒息してしまうので、左右どちらかに向けて寝かせます。
一方で、寝返りを覚えた赤ちゃんが、寝返り遊びをしていて元に戻れなくなってうつ伏せのまま寝てしまったり、寝ている間に自力でうつぶせ寝したりすることもあります。
うつぶせ寝のメリット
うつ伏せ寝は、デメリットばかりが注目されがちですが、メリットもたくさんあります。
呼吸が楽になる
うつぶせ寝の状態では、肺が下にきて心肺機能を高めるため、呼吸や心拍の状態が落ち着きます。
そのため、心肺機能に不安のある未熟児などは、医師から「赤ちゃんをうつぶせ寝させること」を勧められることがあります。
夜泣きをあまりしなくなる
うつぶせ寝させたときの方が、仰向けに寝かせたときよりもグッスリ眠れる時間が長くなって夜泣きの頻度が下がり、目覚めも良くなるという海外の研究結果があります。
また、うつぶせ寝を取り入れた結果、背中スイッチがオンになる頻度が少なくなり、赤ちゃんの睡眠時間が長くなったという親の経験談もよく聞きます。
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吐きにくくなる、げっぷが出やすくなる
食道と胃がつながっているところ(噴門)は、背中側にあります。
赤ちゃんを仰向けに寝かせると噴門が下向きになり、胃の上側(噴門から遠いところに)にはゲップが、胃の下側(噴門から近いところ)には母乳やミルクが溜まり、母乳やミルクが食道へ逆流しやすくなります。
一方で、うつぶせ寝させると噴門が上向きになるので、胃の上側(噴門から近いところ)にはゲップが、胃の下側(噴門から遠いところ)には母乳やミルクが溜まり、母乳やミルクを吐きにくくなる上にゲップも出やすくなります。
また、新生児期の赤ちゃんの胃は、軸捻転(胃がねじれたり折れ曲がったりすること)を起こしやすいものです。
胃軸捻転を起こすと、空気の通り道が塞がれてゲップが出にくくなりますが、うつぶせ寝なら噴門が上向きになるのでゲップが出やすくなります。
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頭の形が整えられる
低月齢の赤ちゃんの頭はとても柔らかく、仰向けの状態でばかり寝ていると、頭の形がゆがんだり、後頭部が絶壁になったりします。
うつぶせ寝だと後頭部が圧迫されず、顔の向きを左右に変えやすいので、頭の形がきれいな状態で維持されやすいものです。
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赤ちゃんの健全な成長を促す
赤ちゃんをうつぶせの状態で寝かせると、頭をグググッと持ち上げたり、腕を上下左右に伸ばしたりします。
起きている時が中心ですが、寝ている時も無意識のうちに身体を動かしています。
こうした動きは、仰向けに寝かせている時にはあまり使わない背筋や首や肩の筋肉を使うので、仰向けにしか寝かせていない赤ちゃんよりも、身体の筋肉や運動機能がバランス良く発達します。
そのため、うつぶせ寝の経験がある赤ちゃんは、経験のない赤ちゃんよりも首すわりの完成が早く、寝返りやハイハイも早く始める傾向があります。
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うつぶせ寝のデメリット(リスク)
赤ちゃんのうつ伏せ寝については、メリットよりもデメリットが注目され、一般的にもよく知られています。
デメリットを過度に心配しすぎる必要はありませんが、きちんと把握しておくことは大切です。
窒息
赤ちゃんのうつぶせ寝の一番のリスクは窒息です。
仰向けに寝かせている時に比べて、口や鼻が布団やベッド、タオルなどで塞がれて窒息する可能性が高くなります。
健康な赤ちゃんの場合、固いマットレスなどの上ならうつぶせ寝させても問題ありません。
しかし、柔らかい布団の上だと顔が布団に埋まって窒息するリスクが高く、タオル、ガーゼ、シーツなどで鼻が塞がってしまうこともあります。
低月齢の赤ちゃんは、首周りを中心として筋肉が未熟なので、身体に異常がなくても何かの拍子に窒息するリスクがあるのです。
実際、低月齢の赤ちゃんをうつぶせ寝させ、窒息死させたケースは少なくありません。
乳幼児突然死症候群(SIDS)
うつぶせ寝は、乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連性が指摘されています。
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、健康状態に目立った問題のなかった赤ちゃんが、事故などではなく、眠っている間に突然死亡してしまう病気のことです。
診断基準上は原則1歳未満になっていますが、生後2ヶ月から生後6ヶ月未満に死亡する赤ちゃんがほとんどです。
件数自体は年々減る傾向にはありますが、それでも、乳児の死亡原因の第3位となっています。
現時点では、乳幼児突然死症候群(SIDS)のはっきりした原因は解明されていません。
しかし、枕やタオル、ぬいぐるみなどが赤ちゃんの近くにあったり、赤ちゃんが柔らかい布団やマットレスで寝ていたりした場合に、赤ちゃんの口が覆われ、新しい空気が取り込めなくなって(赤ちゃんの吐いた息が外に出ていかず、外からも新しい空気が入ってこなくて、吐いた空気を再び赤ちゃんが吸い込むことになる。)、体内の酸素量が減って酸欠状態になるという説が有力です。
うつぶせ寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関連性を指摘する情報が出回っているのも、この説によるところが大きいと言えます。
ただし、うつぶせ寝が乳幼児期突然死症候群(SIDS)の原因だと断定されたわけではありません。
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赤ちゃんにうつぶせ寝させる時期はいつから?
うつぶせ寝には、たくさんのメリットがある反面、窒息や突然死というとても高いリスクがあります。
特に、首がすわらず、寝返りもできない状態でのうつぶせ寝はとても危険です。
うつぶせ寝させる目安は、「うつぶせから仰向けに寝返りする「寝返り返り」をマスターしてから」というのが一般的です。
ただし、うつぶせ寝による事故は「赤ちゃんが寝返りを覚えたての頃」にも多発しているという点に注意が必要です。
つまり、「自力で寝返りできるようになったから、うつぶせ寝させても大丈夫だろう。」と考えてうつぶせ寝させた結果、赤ちゃんがうまく寝返りできず窒息などで命を落としているのです。
また、「うつぶせ寝は生後何ヶ月から」と記載されている書籍やサイトはありますが、赤ちゃんの成長は個人差が大きいため、月齢で判断するのは危険です。
うつぶせ寝させるのは、赤ちゃんが寝返りと寝返り返りを100%成功させられるようになってからにし、最初のうちは親が傍で見守ってあげましょう
うつぶせの練習
うつぶせ寝は慎重に始めるべきだというのは、すでに紹介したとおりです。
しかし、うつぶせは、赤ちゃんの筋肉や運動機能をバランス良く向上させる効果があるため、低月齢のうちから練習させてあげたいものです。
生後3か月以降にうつぶせの練習をさせようとしても嫌がることが多いので、できるだけ早くうつ伏せの練習を開始し、うつ伏せの状態に慣れさせておくことが大切です。
赤ちゃんをうつぶせ寝させるときのポイント
うつぶせ寝のデメリットを踏まえて、赤ちゃんをうつぶせ寝させるときのポイントを紹介します。
赤ちゃんがうつぶせ寝しているときは、そばで見守る
うつぶせ寝は、あお向けに寝かせているときより窒息の可能性が高いことは間違いありません。
そのため、うつぶせ寝を始めたての頃は必ずそばで見守り、こまめに赤ちゃんの寝息や表情を確認しましょう。
そばを離れるときは、たとえ赤ちゃんがスヤスヤ寝ていても、仰向けに寝かせかえてください。
うつぶせ寝させた状態で赤ちゃんのそばを離れるのは、最低でも赤ちゃんが寝返り返りをマスターしてからです。
その場合でも、すぐ駆けつけられる場所にいて、こまめに赤ちゃんの状態を確認しましょう。
赤ちゃんの状態を確認するポイントは、次のとおりです。
- 顔の向き:布団に突っ伏している場合は、すぐ左右どちらかに向かせる
- 呼吸:鼻の前に手を近づけて鼻息を確認する
- 汗:汗をかいているときはふき取り、衣類やかけ布団、空調を確認する
布団やマットレスは固めのものを使用する
うつぶせ寝させるときは、柔らかい素材は厳禁です。
柔らかい素材の布団やマットレスは、赤ちゃんがうつぶせ寝したときに顔が沈み込み、窒息のリスクがグンと高くなりますし、寝返り返りもしづらくなります。
また、布団やマットレスが固めでも、シーツがたるんでいると赤ちゃんの顔に張り付いて窒息を招くので、注意しましょう。
赤ちゃんの周りにものを置かない
タオル、ガーゼ、人形などを赤ちゃんの寝ているそばに置いておくと、何かのきっかけで赤ちゃんの鼻や口をふさぐリスクがあります。
赤ちゃんが寝ているところの近くには、なるべく物を置かないようにしましょう。
枕は使用しない
枕に顔をうずめて窒息するリスクがあるので、使用は控えましょう。
どうしても使用する場合は、布団と同じで固めの物にします。
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うちの場合
生後1ヶ月半くらいから、赤ちゃんにうつぶせ寝させるようになりました。
最初は、赤ちゃんがうつぶせ寝したまま動かないので心配になり、すぐに抱き上げていましたが、少しずつうつぶせの状態で過ごさせる時間を伸ばしていきました。
生後2か月頃になると、赤ちゃんが手足をバタバタさせてうつぶせ寝を嫌がりだしましたが、生後3ヶ月頃には落ち着き、うつぶせ寝で寝ている時間も長くなっていきました。
また、赤ちゃんは、うつぶせにするとすぐげっぷをしましたし、機嫌も良くなっていたので、積極的にうつぶせ寝を活用するようになりました。
ただし、うつぶせ寝窒息のリスクはかなり心配しており、うつぶせ寝させるときは妻か私が必ずそばで見守り、そばを離れるときは仰向けにしていました。
赤ちゃんが寝返りと寝返り返りをマスターした後は、夜も数日おきにうつぶせの状態で寝かせるようにしましたが、しんどくなると泣きだすか、自力で寝返り返りしていました。
一度、私の枕に突っ伏して寝かけたことがありましたが、自分で顔を横に向けることができていました。
追記1(生後1歳4ヶ月)
生後10ヶ月頃から、仰向けに寝かせても寝返りしてうつ伏せで眠るようになりました。
生後1歳を過ぎると、土下座のポーズで寝る機会も増えてきて、毎日赤ちゃんの寝姿を見るのが楽しみでなりません。
かけ布団に顔をうずめて寝ていることもあるので少し心配することもありますが、ジッと観察していると、苦しくなる前に自分で顔の向きや態勢を変えていました。
うつぶせ寝に関する事故
28.8.5
平成28年8月5日、同年4月に生後4ヶ月の赤ちゃんが乳児院で亡くなっていたというニュースが報道されました。
この赤ちゃんは、うつぶせで息をしていない状態で発見されて、病院に運ばれたものの2日後に亡くなったようで、多くの記事が「うつぶせ寝中に亡くなった」という見出しを付けていました。
しかし、記事を読んでみても、もともとうつぶせ寝していたのか寝返りでうつぶせ寝になったのか、職員の巡回体制、うつぶせ寝以外に問題があったのかどうかなどは詳しく書かれておらず、うつぶせ寝だけに原因を求めて良いのか分かりませんでした。
赤ちゃんのご冥福を祈るとともに、原因が解明され、再発防止のための適切な手立てが講じられることを切に願います。
追記(28.10.22)
平成28年10月21日、消費者庁が、平成26年前での約5年間で、就寝中に窒息死した生後1歳未満の子供が160人になるという集計結果を発表しました。
内訳をみると、うつぶせ寝をさせている時や、大人用の寝具に寝かせている最中が多く、消費者庁は、「赤ちゃん用のベッドを使用し、仰向けで寝かせるよう心がけて。」という注意喚起を行っています。
追記(29.1.14)
平成29年1月14日、同月11日、認可外保育施設で、うつぶせ寝していた生後9ヶ月の女の子が心肺停止状態に陥って、同月12日に死亡したというニュースが報道されました。
当時、施設には施設庁と女の子しかおらず、施設庁は女の子から目を離していたようです。
司法解剖でも死因は特定できていないので、今後の報道が待たれるところです。