特別養子縁組とは?条件と手続き費用、戸籍は?普通養子縁組との違いは?

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があるのを知っていますか?
今回紹介する特別養子縁組は、普通養子縁組よりも条件が厳しいですが、養子縁組が認められると、法律上、実の親子関係を断絶させて、子を望む夫婦(養子)と子どもの間に親子関係を成立させるという強い効果を持ちます。
そのため、制度の趣旨を十分に理解した上で、慎重に判断することが求められています。
近年、特別養子縁組を希望する夫婦が増加し、それに伴って、営利目的で子どもをあっせんする悪質な業者が登場するといった問題が顕在化していることもあり、より一段と制度の理解や慎重な判断が求められるようになってきました。
このページでは、特別養子縁組とは何か、普通養子縁組との違い(成立条件、親子関係、縁組後の戸籍の記載など)、家庭裁判所の手続き(条件、費用、期間など)について紹介します。
特別養子縁組とは
特別養子縁組とは、原則、6歳未満の子どもの幸せのために特に必要な場合に、法律上の子どもと実親との親子関係を断絶させて、子を望む夫婦(養親)と子どもの安定した親子関係を成立させる縁組です。
特別養子縁組は、子どもの幸せのための縁組制度なので、縁組が認められるには、縁組することが子どもの幸せにかなう必要があります。
跡取りにしたい、健康な子が欲しいといった目的で特別養子縁組を申し立てても、認められることはありません。
また、赤の他人同士の間に法律上の親子関係を認める以上、一旦、縁組が成立すれば、成長の過程で子どもが問題を繰り返したり、病気や障害に悩まされたりしても、自分の子どもとして責任をもって関わることが求められます。
特別養子縁組と普通養子縁組の違い
特別養子縁組と普通養子縁組の違いは、次のとおりです。
- 成立条件
- 親子関係
- 戸籍の記載
- 養子となる者の年齢
- 離縁
- 相続権
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:成立条件
特別養子縁組は、家庭裁判所の審判で認容されることで成立します。
一方の普通養子縁組は、養親と養子の縁組意思と届出によって成立します。
ただし、15歳未満の子どもと普通養子縁組する場合は、法定代理人(実の父母や未成年後見人など)の代諾が必要になります。
また、養子となる者が未成年で、養親となる者の直系卑属(孫など)でない場合は、普通養子縁組でも家庭裁判所の許可が必要になります。
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:親子関係
特別養子縁組が認められると、法律上、実の親との親子関係が断絶し、養親との親子関係が成立します。
普通養子縁組が認められると、元々ある実の親との親子関係に加えて、養親との親子関係が成立します。
つまり、普通養子縁組の場合は、実の親との親子関係はなくなりません。
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:戸籍の記載
特別養子縁組の場合は、戸籍に養子縁組したことが記載されず、続柄も養子ではなく父、母、長男、長女と記載されます。
ただし、特別養子縁組の審判が確定した日は記載されます。
一方で、普通養子縁組の場合は、養子縁組した事実と成立した年月日が戸籍に記載され、続柄は養父、養母、養子、養女と記載されます。
特別養子縁組の戸籍の例
例えば、乳児期太郎くん(養子)と、幼児期一郎さんと幼児期花子さん(養親)の特別養子縁組が成立した場合、太郎くんの戸籍記載は次のようになります。
【戸籍に記載されている者】
- 名:太郎
- 生年月日:平成○年◯月○日
- 父:幼児期一郎
- 母:幼児期花子
- 続柄:長男
- 【身分事項 出生】
- 出生日:平成○年◯月○日
- 出生地:◯◯
- 届出日:平成○年◯月○日
- 届出人:父
- 民放817条の2による裁判確定日:平成○年◯月○日(特別養子縁組の審判が確定した日)
- 届出日:平成○年◯月○日
- 届出人:父母
- 送付を受けた日:平成○年◯月○日
- 受理者:◯県◯市長
- 従前の戸籍:〇市〇町〇
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:養子となる者の年齢
特別養子縁組は、養子となる子どもが、養親との間に実の親子と同等の密接な関係を築き、幸せな家庭生活を送ることを目指しています。
そのため、親子関係の形成に重要な乳幼児期のうちに縁組を成立させることが望ましいと考えられており、原則、6歳未満の子どもとの縁組しか家庭裁判所に申し立てられないことになっています。
ただし、養親が、子どもが6歳未満の頃から継続して養育している場合に限り、8歳未満なら家庭裁判所に申し立てることができます。
一方の普通養子縁組は、養子となる者の年齢に制限はありません。
ただし、成立条件のところで書いたように、15歳未満の子どもと普通養子縁組する場合は、法定代理人の代諾が必要ですし、養子となる者が未成年で、養親となる者の直系卑属でない場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:離縁
特別養子縁組は、一旦成立すると、原則、離縁はできません。
離縁するには、家庭裁判所の手続が必要ですし、離縁が認められる要件も厳しく定められています。
一方の普通養子縁組は、離縁の届け出を行うだけで離縁することができます。
特別養子縁組と普通養子縁組の違い:相続権
特別養子縁組は、法律上、実の親子との親子関係を断絶させる手続きなので、縁組が成立した後は実の親の相続権は消滅し、養親の相続権が発生します。
普通養子縁組は、成立後も実の親との関係が継続するため、実の親の相続権も養親の相続権も持つことになります。
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特別養子縁組の条件
特別養子縁組は、実の親子関係を法律上断って、安定した養親子関係を成立させるという強い効果を持つため、家庭裁判所の手続きを経る必要があり、家庭裁判所の裁判官が養子縁組を認めるかどうか判断します。
家庭裁判所に特別養子縁組を申し立てるための主な要件は、次のとおりです。
- 養親に配偶者がいること(男性もしくは女性のみでは申し立てることができない)
- 養親は、原則、25歳以上であること
- 養父と養母が共同して養子縁組をすること
- 養子になる子どもは、原則6歳未満であること(事実上、6歳未満から監護していれば、8歳未満まで申し立てることができる)
- 養親は、養子を6ヶ月以上継続して養育していること(試験養育期間)
試験養育期間は、家庭裁判所に申し立てた後の期間も算入されますが、6ヶ月以上経過するまでは特別養子縁組が認められることはありません。
また、特別養子縁組が成立した後の離縁は、原則、禁止されています。
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特別養子縁組の手続きの流れ
家庭裁判所に特別養子縁組を申し立てるまで、申立て、申し立てた後の流れに分けて見ていきます。
特別養子縁組の流れ:家庭裁判所に申し立てるまで
特別養子縁組をする子どもを見つける方法には、大きく2つあります。
- 児童相談所のあっせんを受ける
- 民間団体のあっせんを受ける
特別養子縁組の流れ:児童相談所のあっせんを受ける
児童相談所から特別養子縁組をする子どもを紹介してもらう場合は、特別養子縁組を前提とした里親登録が必要になります。
児童相談所が行う研修(内容は自治体によって異なります)を受けて里親登録を終えると、特別養子縁組をする見込みの子どもがいる施設などに通って一定期間は交流を深め、その後、その子を家庭で預かって、児童相談所の監督の下で養育します。
そして、養育態度や子どもとの関係性などに特段の問題がない場合は、家庭裁判所に特別養子縁組の申し立てを行います。
子どもを預かってから申立てまでの期間は、一定ではありませんが、おおむね8ヶ月~1年くらいです。
里親研修、審査、子どものあっせんに関する費用、里親委託費などは税金で支払われるため、経済的な負担はほぼありません。
特別養子縁組の流れ:民間団体のあっせんを受ける
特別養子縁組をあっせんする民間団体などから子どものあっせんを受ける場合、子どもと面会して交流する期間がほぼない状態で、新生児や低月齢のうちに預かることが多くなっています。
民間団体がそれぞれ独自の審査方法や研修体制を整備しており、児童相談所の基準はもちろん、民間団体間でも基準が異なることがあります。
また、あっせんには高額な費用がかかることもあるため、事前にあっせんを頼む団体に確認しておく必要があります。
特別養子縁組の流れ:家庭裁判所に申し立てる
特別養子縁組を申し立てることができるのは、特別養子縁組の養親となる人です。
申立て費用と必要な書類を持って、住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
申立て費用
収入印紙800円分と、郵便切手です。
郵便切手は、申立てを行う家庭裁判所によって異なるので、事前確認が必要です。
申立てに必要な書類
- 申立書:1通
- 養親となる者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 養子となる者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 養子となる者の実父母の戸籍謄本(全部事項証明書)
養子となる者の実父母の戸籍謄本については、養親となる者は取得するのが難しいので、児童相談所や民間団体に相談しましょう。
特別養子縁組の流れ:家庭裁判所に申し立てた後
家庭裁判所に特別養子縁組の申し立てを行うと、まず、申立ての条件(特別養子縁組の条件で紹介した内容)が審査されます。
問題がなければ申立てが受理され、調査という手続きに回されます。
調査手続きでは、家庭裁判所の職員から裁判所に呼び出され、申立ての動機、養子となる者との関係、これまでの養育期間や関係性などを聴取されます。
その後、家庭裁判所の職員が家庭訪問に来て、家庭環境をチェックされます。
この他、家庭裁判所の職員は、児童相談所や民間団体に接触して申立てまでの経過を確認したり、実の親から特別養子縁組の同意を取り付けたりします。
もし、実の親の同意が得られない場合は、養親となる者に問題がなくても、特別養子縁組が認められないことがあります。
また、申立て前に試験養育期間が経過していない場合は、経過するまでの間は調査手続きが停止し、期間経過後に手続きが再開されます。
調査手続きが終了すると、家庭裁判所の裁判官が内容を審査し、特別養子縁組を認めるかどうか判断し、結果が書面で通知されます。
特別養子縁組を認める通知が届いたら、10日以内に、家庭裁判所の審判書の謄本と確定証明書を持って、住んでいる市町村役場の戸籍課に特別養子縁組届を提出します。
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まとめ
特別養子縁組は、実の親に育ててもらえない子どもと、子どもが欲しくても授からない夫婦を結び付ける制度ですが、あくまで目的は子どもの幸せで、子どもの幸せに合致しない場合には認められないこともあります。
特別養子縁組をする子どもの多くは、被虐待児、赤ちゃんポストに預けられた子、捨て子など複雑な事情を抱えています。
特別養子縁組をする夫婦には、こうした子どもたちを実の親と同じように受け入れ、愛情を注いで健全に育て上げる責任があります。
「子どもが欲しい」という気持ちは大切ですが、縁組をした後の子どもとの具体的な生活設計を思い描き、それを実現するための努力をすることが求められているということも、常に考えておく必要があります。