育児休業制度の推移と男性の育休が推進される理由は?

男性 育休 推移

育児休業は、労働者が子どもを養育するために取得できる、法律で規定された休業制度ですが、ずっと昔からあったわけではありません。

また、現在は男性の育児休業取得が推進されていますが、これについても近年の社会の動向に合わせて始まったものです。

この記事では、育児休業制度の推移と、男性の育児休業が推進される理由について解説します。

育休(育児休業)とは

育休(育児休業)とは、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」という。)に規定された、子どもを養育する労働者が取得できる休業制度です。

育児・介護休業法第2条第1項では、育児休業について「労働者が、(中略)その子を養育するためにする休業をいう。」と規定されています。

原則として子どもが1歳に達する日の前日まで、子どもを養育する労働者が男女問わず取得でき、休業中は生活支援のために雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

育児休業の取得率は、男性が5.14%、女性が83.2%(いずれも2017年度の速報値)です。

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育休(育児休業)制度の推移

日本では、1975年7月に「育児休業法(義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律)」に成立していますが、女性公務員の一部のみを対象としたものでした。

育児休業等に関する法律が成立するまで

一昔前までは、「寿退社(女性が結婚を契機に会社を辞めること)」や「永久就職(女性が結婚して専業主婦になること)」という言葉が浸透しており、実際に結婚をきっかけに退職して家庭に入る女性が多くいました。

それが、バブル崩壊で日本の景気が急速に後退し、男性(夫)の収入だけで家計を維持するのが困難になったことで、結婚や出産の後も退職せず働き続けたいと希望する女性が増加し、一方で、企業に依存しても経済的に豊かな生活が望めなくなったことで、仕事に全力を注ごうとする男性が減少します。

また、少子高齢化の進展によって将来の労働力人口低下などが大きな課題として認識され、その対策が求められるようになっていきました。

こうした状況下、女性が労働力として期待されるようになり、男女雇用機会均等法によって雇用における女性差別が禁止されたことも相まって、女性の社会進出が進み、国や企業がワークライフバランスを支援する動きも見られるようになります。

しかし、男女雇用機会均等法で禁止されたのは、募集、採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退職、解雇などについて女性を差別的に取り扱うことであり、妊娠や出産の規定は不十分であった上、育児についても「育児のための便宜供与」をする努力義務が事業主に課されただけでした。

そのため、職場内ではマタニティハラスメント(職場における妊娠や出産に関する嫌がらせやいじめ)が横行し、妊娠や出産の後も仕事を続けたいと希望する女性に対して、降格、解雇、配置換など女性にとって不利益な取り扱いがなされ、それを苦に退職する女性も珍しくありませんでした。

育児休業等に関する法律が成立

1989年に特殊合計出生率が1.57まで低下した「1.57ショック」や、家事育児などは男女が平等に負担すべきという考え方が国際的に強まったこともあり、1991年に「育児休業等に関する法律」が成立します(施行は1992年4月)。

育児休業等に関する法律に規定された主な内容は、以下のとおりです。

  • 全事業所の労働者に育児休業制度が適用される
  • 男女ともに子どもが1歳になるまで育児休業が取得できる
  • 労働者から育児休業の申し出を受けた事業主は原則として拒否できず、育児休業を理由として解雇できない

全事業所の労働者に育児休業制度が適用される、男女ともに育児休業が取得できるなど現在の育児休業制度の原型ができています。

しかし、違反した場合の罰則規定がなく、休業中の社会保険料が免除されない、原職復帰や不利益取扱い禁止の明文規定がないなどの課題も多く、法律ができた後も妊娠、出産、育児休業をきっかけとする女性の離職が後を絶ちませんでした。

なお、育児休業等に関する法律は、介護休業に関する規定の追加に伴って1995年に育児・介護休業法と改称されています。

ワークライフバランスの推進

国は、2000年代以降、やりがいを持って仕事に取り組んで責任を果たすとともに、家事育児や趣味など家庭生活も充実できるような環境を社会全体で整備することが目指し、ワークライフバランス支援を法制化する動きを強めますが、その中で、育児休業制度についても繰り返し改正を行うようになります。

例えば、厚生労働省は、「子の養育または家族の介護を行い、または行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成 21年厚生労働省告示第 509 号)」において、育児や介護を行う労働者の保護に必要な雇用管理上の措置を講ずるよう事業主に求めているのもその一つです。

  • ワークライフバランス:家庭と仕事を両立させることで中長期的に仕事の生産性が向上するという考え方で、日本では「骨太の方針2007」に盛り込まれた頃から社会一般に浸透した。

最近の動向

最近では、2017年1月に男女雇用機会均等法と育児・介護休業法が改正された他、厚生労働省が「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)」を策定しています。

育児・介護休業法の主な改正内容は、以下のとおりです。

  • 有期契約労働者の育児休業取得要件を緩和(申請時点で雇用期間が1年以上継続など)
  • 子の看護休暇の取得単位の変更(1日単位のみから、1日または斑日単位で取得できるようになった)
  • 育児休業の対象となる子どもの範囲の変更(法律上の親子関係にある子どものみでなく、特別養子縁組の試験養育期間中の子どもや里親委託されている子どもも対象となった)
  • マタハラ・パタハラの防止措置を講じるという、雇用者側の努力義務を新設

指針では、妊娠、出産、育児休業などに関するハラスメントの相談窓口の設置や、相談体制の整備を事業主に義務付けられました。

また、2017年10月、再び育児・介護休業法が改正されています。

  • 子どもが1歳6ヶ月に達した時点で一定の事情がある場合について、育児休業の期間を最長で2歳まで延長できることとなった
  • 育児休業中に支払われる育児休業給付金の給付期間も最長2歳まで延長されることとなった
  • 労働者やその配偶者の妊娠・出産を知った場合に、労働者に対して育児休業などの制度を知らせるという、雇用者側の努力義務を新設
  • 未就学の子どもを養育する労働者が、子どもの養育を目的として利用できる休暇制度を設けるという、雇用者側の努力義務を新設

今後も、国の施策や社会の動向によって育児休業制度が改正されていく見込みです。

現在の育児休業制度

育児・介護休業法に定められた育児休業に関する制度は、以下のとおりです。

  • 育児休業
  • 子の看護休暇
  • 育児目的休暇(努力義務)
  • 残業の免除(育児のための所定外労働の制限)
  • 育児のための時間外労働の制限
  • 育児のための深夜業の制限
  • 育児のための所定外労働時間短縮の措置
  • 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置(努力義務)
  • 不利益取扱いの禁止
  • 育児休業等に関するハラスメントの防止(マタハラ・パタハラなど)
  • 育児休業制度の個別周知(努力義務)

育児休業の対象者、期間、回数については、以下のとおりです。

対象者
  • 日々雇用を除く労働者
期間
  • 原則として子どもが1歳に達する日までの連続した期間
  • 父母がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2ヶ月に達する日まで
  • 子どもが1歳に達する日に(子どもが1歳2ヶ月に達する日までの育児休業を1歳を超えて取得している場合、その終了予定日に)、父母の一方が育児休業中であり、一定の事情がある場合は、子どもが1歳6ヶ月に達する日まで
  • 1歳6ヶ月に達した時点で一定の事情がある場合、再度の申出により最長2歳まで延長できる
回数
  • 子ども1人について原則1回
  • 子どもの出生後8週間以内に産後休業をしていない従業員が最初の育児休業を取得した場合、再度の育児休業取得が可能
  • 一定の事情がある場合、再度の取得が可能
  • 子どもが1歳6ヶ月までの育児休業は、子どもが1歳までの育児休業とは別に取得が可能

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男性の育児休業が推進される理由

国は男性の育児休業取得を推進しています。

その背景には、ワークライフバランスや女性が活躍できる社会づくりの推進が影響しています。

女性が活躍できる社会づくり

少子高齢化などの影響で女性が労働力として期待されるようになって以降、女性が活躍できる社会づくりが国の施策として推進されています。

女性が活躍できる社会を実現するには、女性が妊娠、出産、育児を経ても退職せず働き続けられる環境を整備するとともに、男性が「育児は夫婦の仕事」という考え方に基づいて積極的に育児参加する必要があります。

しかし、一昔前まで「育児は女性の仕事」という考え方が浸透していたところ、男性自身や企業の意識を変えるのは容易ではなく、国が施策として男性の育児休業取得を推進することで、積極的な育児参加を促そうとしているのです。

ワークライフバランス

一昔前の日本では、男性は仕事中心の生活を送るのが当たり前とされており、長時間労働が肯定されていました。

しかし、バブル崩壊以降、国や企業がワークライフバランス支援に乗り出して以降、心身の健康に悪影響を与えて生産性や活力の低下につながる、家庭で過ごす時間のなさが少子化につながるなど、仕事中心の生活や長時間労働の問題点が指摘されるようになりました。

そして現在は、やりがいや責任を持って仕事に取り組むとともに、家事育児や趣味など家庭生活を充実させるというワークライフバランスを重視した働き方が良しとされており、その一環として男性の育児休業取得が施策として推進されています。

まとめ

男性の育児休業取得を国が施策として推進し、その動きは企業にも浸透しつつあります。

全国津々浦々まで男性の育児休業取得が浸透するにはまだまだ時間がかかりますし、男性の育児参加の先進地域である北欧のような環境が実現するかどうかも分かりません。

しかし、育児に興味関心を持ち、育児休業取得を希望する男性は確実に増加しており、男性の育児休業取得の動きはより一層強くなると期待されています。

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